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熊本地方裁判所 昭和43年(行ウ)8号 判決 1972年9月13日

八代市興善寺町三九一番地

原告

新興商事有限会社

右代表者代表取締役

窪田光徳

右訴訟代理人弁護士

村上新一

八代市花園町一六番地

被告

八代税務署長

青木勉

右指定代理人

検事 小沢義彦

法務事務官 伊藤三津男

下田稔

大蔵事務官 村上久夫

田川修

主文

被告が昭和四一年六月二四日付でなした原告に対する昭和四〇事業年度の法人税に関する更正処分および重加算税等の賦課処分につき、熊本国税局長が同四三年五月二八日付でなしたその一部を取消す旨の裁決額(別表(一)参照)のうち、同四〇事業年度の法人税の内金三二万一、四〇〇円、過少申告加算税の内金一万七、六七五円、重加算税の内金一、五〇〇円の各部分を取消す。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを一〇分し、その一を被告、その余を原告の各負担とする。

事実

第一当事者双方の申立

原告は「被告が昭和四一年六月二四日付でなした原告に対する昭和三九および同四〇各事業年度の法人税に関する更正処分および重加算税等の賦課処分につき、熊本国税局長が同四三年五月二八日付でなしたその一部を取消す旨の裁決額のうち、同三九事業年度の法人税金三一万一、九〇〇円、重加算税金九万三、五〇〇円、同四〇事業年度の法人税金四九七万二、〇〇〇円、過少申告加算税金七万九、〇〇〇円、重加算税金五万二、五〇〇円の各部分はいずれもこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求た。

第二原告の主張

(請求の原因)

(一)  原告は昭和三七年五月一四日成立登記された会社であり、金銭の貸付・動産不動産の売買・果樹園経営を目的とするものであるが、現実には果樹園経営はしていない。

なお、原告の事業年度は一月一日より一二月三一日までの一年間である。

(二)  原告は各事業年度とも期日までにその法人税の自主申告をしていたところ、昭和四一年六月二六日被告からその前の二事業年度分と併せて同三九および同四〇各事業年度分につき、法人税の更正処分ならびに重加算税の賦課通知をうけた。

(三)  原告としては、右更正処分が余りにも過大であるところから、両年度分について被告に異議の申立をしたところ、被告は同年一二月一五日付で一部取消の決定をしたけれども、それは僅少な額について取消したに過ぎなかつたので、更に原告は昭和四二年一月中熊本国税局長に審査の請求をなし、その結果同国税局長は同四三年五月二八日付で法人税の更正処分および重加算税の賦課決定の一部を取消す旨の裁決をして同年六月六日原告に通知した。

しかして、その内訳および原告主張の所得額等との比較は本判決末尾添付別表(一)のとおりであり、また、各科目についての被告の裁決額と原告の主張額との異同は別表(二)のとおりである。

(四)  しかしながら、同国税局の審査裁決にかゝる原処分の取消も原告の真の所得に副うものではなく、特に、昭和四〇年度分につき、被告がいわゆる評価損否認として所得に計上した金一、二六〇万三、七三八円については、金五六万七、四三五円が取消されたに過ぎないが、右は、原告が貸金業のほか不動産売買業をしていることを看過して調査し、全く会計原則および税法理論を無視した誤つた賦課処分であり、明白な課税誤謬である。

(五)  よつて、原告は被告に対し、別表(一)の末段記載の法人税・過少申告加算税・重加算税の差額部分の取消を求める。

(被告の主張に対する認否および反論)

(一)  被告主張の収入利息計上もれに関する別表(三)は、以下述べるものを除き、すべて認める。すなわち、原告主張額は、昭和三九年度分につき5宮崎ユキエ金二三七万六、〇〇〇円、7仮屋陽城金四五万九、〇〇〇円、16宇田幸人一万一、二五〇円、13木庭宗和、14・15荒岡良平、17光永徹はいずれもゼロであり、同四〇年度分につき7・8木庭宗和金五二万五、〇〇〇円、9荒岡良平ゼロである。

(二)  同三九年度経費否認金八万九、八八〇円は、真実接待費および雑費等として支出されたもので、否認不当である。

(三)  同年度減価償却否認金一七万〇、七八六円については、原告が貸金の回収等のために貨物自動車を利用することがあり、その利用率は一〇分の二位であるので、せめて金三万四、一五七円は是認さるべきである。

(四)  同年度重加算税は、さきに主張しているとおり、金九万〇、一〇〇円の限度で相当である。

(五)  同四〇年度評価損否認金一、二〇三万六、三〇三円の点について昭和四〇年七月現在原告が宮崎ユキエに対し貸付元本金七〇〇万円および未収利息金二一二万円の債権があつたことは認める。

しかして、宮崎ユキエは原告に対する右債務を弁済するために、熊本市上通町五番宅地一〇二・七九坪を処分しようとして、坪当り金一〇万円合計金一、〇二七万九、〇〇〇円位に見積つたが、同金額では買手がつかなかつたので、原告に買受方の申込があり、原告としても貸金回収上好都合であるところからこれを買受けることゝしたが、同人と交渉の上、右宅地のほかかねて担保の目的で原告のために所有権移転仮登記をしてあつた熊本市島崎町字荒尾南一、七一三番の三一畑一反三畝二歩ほか畑九筆合計三反六畝二七歩を買受けることゝし、前記債権合計金九一二万円と右土地の時価との差額金三〇〇万円を支払つた(なお、仲介手数料は金五〇万円ではなく、金一〇〇万円である)。

右のとおりで、原告は時価相場で右宅地および畑を買受けたものであつて、被告主張のように純然たる代物弁済でもなければ、著しく低廉な価額で取得したわけではない。なお、右畑については、農地法第五条所定の県知事の許可を条件とする停止条件付売買契約による所有権移転の仮登記であり、未だ農地転用の許可がなく且つ原告が非農家で農地取得の権利がないため、現在のまゝではその所有権取得は困難である。

かような次第で、さきに原告が請求原因の中にも述べたところであるが、被告の評価損否認についての主張ないし仮定的主張はすべてこれを争う。

(六)  同年度過少申告加算税および重加算税については、既述のとおり、前者のうち金一五万六、〇〇〇円、後者のうち金五万七、六〇〇円を超える部分はいずれも不当である。

第三、被告の主張

(答弁)

請求原因事実中、(一)のうち原告が不動産業を営むことのみ否認し、その余は認める、(二)および(三)はいずれも認める、(四)は争う。

(被告の課税処分の前堤および根拠に関する主張)

(一)  原告の収入利息計上もれは、昭和三九事業年度分合計金一八三万六、〇五〇円、同四〇事業年度分合計金八四万八、七〇〇円であつて、その内訳は添付別表(三)のとおりである。

(二)  別表(二)のうち、同三九年度経費否認金八万九、八八〇円は、原告主張の同年三月一三日雑費一万円および同年七月一一日交際費二万円の支出の目的およびその使途が不明であり、同年一二月一八日高野司法書士に支払つたとする雑費五万九、八八〇円はその事実が認められないので、それぞれ損金計上を否認した。

(三)  別表(二)のうち、同年度減価償却費否認金一七万〇、七八六円は、原告主張の貨物自動車に対する同額の減価償却費について、原告が貸金業を行なつているだけで果樹園の経営を行なつていないので、それは原告代表者個人に帰属するものと認め、損金算入を否認した。

(四)  別表(二)のうち、同年度重加算税金一八万三、六〇〇円は、原告が貸付金に対する収入利息および預金利息について、課税標準または税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽し、その隠蔽したところに基づいて確定申告書を提出していたので、被告は国税通則法第六八条第一項の規定により賦課決定した。

(五)  別表(二)のうち、同四〇年度評価損否認金一、二〇三万六、三〇三円について原告は訴外宮崎ユキエに対して昭和三八年六月一二日から同年一一月一日までの間に貸付けた合計金六六〇万円の代物弁済として、同四〇年七月一三日同訴外人所有の熊本市上通町五一番宅地一〇二・七九坪と同市島崎町字荒尾南一、七一三番の三一畑三畝二一歩ほか九筆合計三反六畝二二歩の畑の所有権を取得した。

しかして、被告の調査によれば、右取得時の価額は前者が金二、二一五万二、三〇三円、後者が金二二〇万四、〇〇〇円合計金二、四三五万六、三〇三円となるところ、原告は適正な取得価額を資産として計上することなく、法定帳簿上には貸付金六六〇万円と未収利息金一七一万六、〇〇〇円を計上したまゝであつた。

なお、原告は簿外で当該土地を取得するために仲介手数料金五〇万円を支出し、代物弁済による取得価額が時価に比して著しく低廉なため宮崎ユキエに金三〇〇万円を支払つている。

したがつて、これらの事実により、原告はその有する資産を評価換えしてその帳簿価額を減額したのと全く同一の結果となるので、被告は右土地の評価額金二、四三五万六、三〇三円から、原告の右取得によつて消滅した宮崎ユキエに対する貸付金六六〇万円と元本に組入れられた未収利息金四〇万円合計金七〇〇万円ならびに未収利息金二一二万円、仲介手数料金五〇万円、宮崎ユキエに支払われた金三〇〇万円合計金一、二六二万円を差引いた金一、一七三万六、三〇三円は、法人税法第三三条第一項の規定による評価損を計上したものとして否認したものである。

仮に右が評価損に当らないとしても、原告が代物弁済によつて取得した資産については、右のとおり低廉な価額で取得したものであり、その取得は同法第二二条第二項のその他の取引で資本等取引以外のものゝ取引に該当する。したがつて、当該取引に対する取得価額金二、四三三万六、三〇三円を土地勘定として計上すべきであり、これから取得経費とみられる前記合計金一、二六二万円を控除すると、結果は前項の場合と同様であり、これによつても本件否認は適法である。

(六)  別表(二)のうち、同年度過少申告加算税二三万三、〇〇〇円および重加算税金一一万〇、一〇〇円は、前者につき、原告が正当な理由なく固定資産の取得価額を計上しなかつたので国税通則法第六五条第一項の規定により、後者につき、前記(四)と同じ理由によつて同法第六八条第一項の規定により、それぞれ賦課決定した。

(七)  なお、原告は、熊本市島崎町字荒尾南一、七一三番の三一畑ほか九筆合計三反六畝二七歩の畑について、それが農地であつて所有権は移転していないと主張するが、公簿上は農地として表示されているものゝ、原告がこれを取得した時点では、既に現況が農地ではなく整地の上宅地化されており、原告はこれを承知の上で取得したものである。

第四、証拠関係

原告は甲第一ないし第一七号証を提出し、証人窪田光太・同稲村寅雄(第一・二回)・同荒岡良平の各証言を援用し、乙第一号証、第四号証、第一一号証の一・二、第一二号証の一ないし三、第一三号証の一ないし四、第一七号証の二、第一八号証、第二〇号証の各成立はいずれも不知、その余の乙号証はすべて成立を認める、と述べた。

被告は乙第一ないし第一〇号証、第一一号証の一・二、第一二号証の一ないし三、第一三号証の一ないし四、第一四号証の一・二、第一五・第一六号証、第一七号証の一ないし三、第一八ないし第二一号証、第二二号証の一・二、第二三・第二四号証の各一ないし五を提出し、証人西嶋義弘・同西道雄の各証言を援用し、甲第一ないし第一二号証の各成立を認め、同第一三ないし第一七号証の成立はすべて不知と述べた。

理由

一、請求原因(一)ないし(三)の事実は、原告が不動産売買業を営んでいたとの点を除き、すべて当事者間に争いがない(もつとも、昭和四〇年当時原告が不動産売買業を営んでいたことを肯定すべき確証はない)。

二、そこで、昭和三九および同四〇各事業年度の法人税等算定の根拠となる原告の所得額について検討する。

(一)  昭和三九年度分について

原告は、同年度の収入利息は、左記以外のものは被告主張のとおりであるが、宮崎ユキエ(別表(三)の一の5)につき金二三七万六、〇〇〇円、仮屋陽城(同7)につき金四三万九、〇〇〇円、宇田幸人(同16)につき金一万一、二五〇円、木庭宗和(同13)・荒岡良平(同14・15)・光永徹(同17)につきすべてゼロであり、また経費否認金八万九、八八〇円および減価償却費否認のうち金三万四、一三七円(いずれも別表(二))については否認不当であると主張する。

そこで、いずれも成立に争いのない乙第二・第三号証、同第五・第六および第九号証、同第一七号証の一および三、同第二一号証、証人西道雄・同西嶋義弘の各証言によりすべて真正に成立したものと認めうる乙第一号証、同第四号証、同第一七号証の二、同第一八号証と右両名の各証言を総合すると、前記宮崎ユキエ外五名について、同年度中に原告が取得した利息等は、宮崎ユキエ分が金二四〇万円、仮屋陽城分が金五四万五、〇〇〇円(調査料金二万円および仲介手数料金七万五、〇〇〇円を含む)、木庭宗和分が金二万九、五〇〇円(調査料金一万円を含む)、荒岡良平分が金二万五、三〇〇円(手数料金一万三、〇〇〇円を含む)、宇田幸人分が金二万七、〇〇〇円、光永徹分が金二八万〇、八〇〇円であることが認められ、甲第一七号証、乙第九号証および同第一六号証、証人荒岡良平・同窪田光太の各証言のうち、右認定に反する記載・供述部分はいずれも採用し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。従つて、収入利息計上もれの点は、すべて被告主張どおりというべきである。また、原告主張の経費金八万九、八八〇円、すなわち同年三月一三日雑費金一万円、同年七月一一日交際費金二万円、同年一二月一八日雑費(高野司法書士分)金五万九、八八〇円および減価償却費のうち金三万四、一三七円については、いずれもこれが原告の営業のために支出され、或いはまた同営業に関する減価償却費であることを認めるに足りる確証はないから、被告の損金否認には何らの不当はない。

そこで、別表(二)および(三)の一記載のとおり、収入利息計上もれ金一八三万六、〇三〇円、経費否認金八万九、八八〇円、減価償却費否認金一七万〇、七八六円として、原告公表当期利益金・加算項目・減算項目を算出すると、同年度の原告の所得額は金二六七万一、六七四円となる(これは被告主張のとおりである)。

(二)  昭和四〇年度分について

先ず原告は、同年度の収入利息が、木庭宗和(別表(三)の二の7・8)につき金五二万五、〇〇〇円、荒岡良平(同9)につきゼロであると主張するところ、成立に争いのない乙第七・第八号証、前掲乙第三・第四号証、証人西道雄・同西嶋義弘の各証言によると、右木庭および荒岡について、原告が同年度中に取得した利息等は、前者が金六三万六、〇〇〇円(調査料金七万五、〇〇〇円を含む)、後者が金一八万円であることがたやすく認められ、甲第一七号証および証人窪田光太・同荒岡良平の各証言のうち、右認定に反する記載・供述部分はいずれも到底採用の限りでない。そうすると、収入利息計上もれの点は、すべて被告主張どおりというべきである。

次に原告は、同年度評価損否認金一、二〇三万六、三〇三円(別表(二))は不当であると主張する。

証人西嶋義弘の証言およびこれによりいずれも真正に成立したものと認めうる乙第一一号証の一・二、同第一二号証の一ないし三、同第一三号証の一ないし四、証人稲村寅雄の証言(第一回)によれば、(イ)昭和四〇年七月現在原告が宮崎ユキエに対し貸付元本金七〇〇万円および未収利息金二一二万の債権を有していたところ(この点については当事者間に争いがない)、宮崎は原告からその弁済を執拗にせまられた結果、同月一三日同人はその代物弁済として同人所有の熊本市上通町五一番宅地一〇二・七九坪および同市島崎町字荒尾南一、七一三番の三一畑一反三畝二歩外畑九筆以上一〇筆合計三反六畝二七歩を原告に譲渡するに至つたが、右不動産の時価は前記債権額をはるかに上廻つていたゝめ、同人の懇請によつて原告は同人に対し追金として金三〇〇万円を支払つたこと、(ロ)しかしながら、被告の調査によると、その当時前者(上通町の宅地)が金二、二一五万二、三〇三円、後者(島崎町の畑一〇筆)が金二二〇万四、〇〇〇円合計金二、四三五万六、三〇三円と評価されたので、これから前記債権金九一二万円、稲村寅雄に対する仲介手数料金五〇万円、宮崎ユキエに支払われた前記金三〇〇万円合計金一、二六二万円を差引いた残金一、一七三万六、三〇三円は、原告がその有する資産を評価換えして帳簿価額を減額したのと同視し、これを法人税法第三三条第一項の規定による評価損を計上したものとしてこれを否認すべきところ、誤算により金一、二〇三万六、三〇三円を否認したこと、以上の事実が認められ、右認定に反する証人窪田光太の供述部分は措信することができない。

以上の認定からすると、別表(二)および(三)のニ記載のとおり、原告の所得額は金一、三四二万七、二〇二円と計上されたことになる。

ところで、旧法人税法のもとでは、法人がその資産について評価換えを計上した場合に、その評価換え後の資産の帳簿価額がその資産の時価を上廻つているときには、当該事業年度の所得額の計算上、評価減の金額を損金額に算入することが許容されていたところ、現行法にあつては、災害その他特殊の場合を除き、損金額に算入することは許容されないことになつており(第三三条第一項)、これは現存資産の評価換えに関するものであるが、本件のように新たに代物弁済として資産(不動産)を取得し、その時価が消滅した債権額を上廻る場合もその理は同一というべく、このことは国税庁の昭和四〇年三月刊行の所得税・法人税関係通達集(乙第一四号証の一・二)の第一三四条(贈与又は低廉取得の場合の評価減の計算)によつて肯定されているところでもあり、被告のなした前記評価額の認定は相当というべく、原告の会計原則および税法理論を無視したものであるとの主張は当らない。

なお原告は、前記島崎町の畑一〇筆については、農地法による県知事の許可を得ていないから、所有権移転の効力が生じないとも主張するが、証人西嶋義弘の証言によれば、右畑はその当時既に宅地造成が行なわれ、現況が宅地であつて、その所有権移転につき県知事の許可を要しないものとなつていたことが認められ、この認定に反する証人窪田光太の供述部分は信用できず、従つて、原告の右主張も失当というべきである。

ところが、証人稲村寅雄(第二回)・同窪田光太の各証言およびこれらによりいずれも真正に成立したものと認めうる甲第一三ないし第一三号証、乙第二〇号証によると、原告は稲村寅雄に対し、仲介手数料として同年七月一六日金五〇万円、同年一二月一五日金一五万円、同年一二月二八日金三五万円を支払つたことが認められ、この認定を覆すに足りる証拠はないから、さきに同仲介手数料金五〇万円を算定したのは相当でなく、前記金一、一七三万六、三〇三円より更に金五〇万円を控除した金一、一二三万六、三〇三円が否認相当というべきである。

そうすると、別表(二)および(三)のニ記載のとおり収入利息もれ金八四万八、七〇〇円、右認定に基づき評価損否認金一、一二三万六、三〇三円として、原告公表当期利益金・加算項目・減算項目を算出すると、同年度の原告の所得額は金一、二六二万七、二〇二円となる。

三、しかして、いずれも成立に争いのない乙第二三・第二四号証の各一ないし五(昭和三九・同四〇年度法人税決議書等)によると、熊本国税局長は、前記認定のとおり、同三九年度分の原告の所得額を金二六七万一、六七四円、同四〇年度分のそれを金一、三四二万七、二〇二円として、同三九年度分については、法人税法第六六条にしたがつて法人税額を金八四万三、三〇〇円(同年度は金三〇〇万円未満の部分につき三三パーセント、金三〇〇万円を超える部分につき三八パーセントの割合)、国税通則法第六八条第一項にしたがつて重加算税額を金一八万三、六〇〇円と認定し、同四〇年度分については、法人税額を金三二三万五、一〇〇円(同年度は金三〇〇万円未満の部分につき三一パーセント、金三〇〇万円を超える部分につき三七パーセントの割合)、国税通則法第六五条第一項にしたがつて過少申告加算税額を金二三万五、〇〇〇円、同法第六八条第一項にしたがつて重加算税額を金一一万〇、一〇〇円と認定したことが窺知されるところ、同四〇年度分については、その所得額が金一、二六二万七、二〇二円というべきことは既述のとおりであるから、右所得額に基づいて修正計算すると、法人税額は金四九一万三、七〇〇円、過少申告加算税額は金二一万七、三二五円、重加算税額は金一〇万八、六〇〇円となる。

四  よつて、原告の本訴請求は、昭和四〇年度分につきその差額、すなわち法人税の内金三二万一、四〇〇円、過少申告加算税の内金一万七、六七三円、重加算税の内金一、三〇〇円の各部分の取消を求める範囲内で正当であるが、その余はすべて失当というべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条・第九二条本文を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斎藤次郎 裁判官 鴨井孝之 裁判官 浦島三郎)

別表(一)

<省略>

別表(二)

昭和三九年度

<省略>

昭和四〇年度

<省略>

<省略>

別表(三) 一 昭和三九事業年度について

収入利息計上もれ一、八三六、〇五〇円

<省略>

<省略>

二 昭和四〇事業年度について

収入利息計上もれ八四八、七〇〇円

<省略>

<省略>

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